最後だとわかっていたなら
2020年5月25日 03時00分2001年9月11日 アメリカで起きた同時多発テロの後、世界中に配信された、一つの詩がありました。
この詩は、ノーマ・コ―ネット・マレックというアメリカ人の女性が、10歳の息子を亡くした悲しみを表現した詩で、9.11同時多発テロの追悼集会でも朗読され、大きな反響を呼んだ詩です。
最後だとわかっていたなら
作:ノーマ・コーネット・マレック
訳:佐川 睦
あなたが眠りにつくのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは
もっとちゃんとカバーをかけて
神様にその魂を守ってくださるように
祈っただろう
あなたが
ドアを出ていくのを見るのが
最後だとわかっていたら
わたしは あなたを抱きしめて
キスをして
そしてまた もう一度呼び寄せて
抱きしめただろう
あなたが
喜びに満ちた声をあげるのを聞くのが
最後だとわかっていたら
わたしは その一部始終をビデオにとって
毎日繰り返し見ただろう
あなたは言わなくても
わかっていてくれたかもしれないけれど
最後だとわかっていたら
一言だけでもいい…
「あなたを愛してる」と
わたしは 伝えただろう
たしかにいつも明日はやってくる
でももし それが私の勘違いで
今日で全てが終わるのだとしたら
わたしは 今日
どんなにあなたを愛しているか
伝えたい
そしてわたしたちは 忘れないようにしたい
若い人にも 年老いた人にも
明日は誰にも
約束されていないのだということを
愛する人を抱きしめられるのは
今日が最後になるかもしれないことを
明日が来るのを待っているなら
今日でもいいはず
もし明日が来ないとしたら
あなたは今日を後悔するだろうから
微笑みや 抱擁や キスをするための
ほんのちょっとの時間を
どうして惜しんだのかと
忙しさを理由に
その人の最後の願いとなってしまったことを
どうしてしてあげられなかったのかと
だから 今日
あなたの大切な人たちを
しっかりと抱きしめよう
そして その人を愛していること
いつまでも いつまでも
大切な存在だということを
そっと伝えよう
「ごめんね」や「許してね」や
「ありがとう」や「気にしないで」を
伝える時を持とう
そうすれば
もし明日が来ないとしても
あなたは今日を後悔しないだろうから
(『最後だとわかっていたなら』サンクチュアリ出版から引用)
しかし、全体の自殺者数が減少し、子供の数も減っているのに、未成年の自殺者は増加しています。
ホームレスを支援するNPO法人抱樸理事長の奥田知志さんは、雑誌の対談の中で、このことを指摘しながら、次のように話されています。
人と人が出会うと、やはり傷つくし、大変なんです。家族といえどもそうです。でも大変でも、人と出会うことに人の幸せはあるのです。「絆」という言葉を平仮名で書くと、最初の二文字は「きず」です。絆は、傷を含みます。人と人が関係を結ぼうとすると、どうしても傷つきます。でも、それを恐れていては社会がなくなってしまう。社会というのは、健全に傷つくための仕組みなのです。私は学校では、そのことこそ教えなくてはならないと思います。どうしたら傷つかずにいきていけるかではなく、人と共に生きていくのは大変だけど、それこそが喜びであり幸せであると。
(『教職研修』2020年6月号p.6から引用)
インターネットやSNS上で、
誰かを攻撃して傷つけてしまわないように。
わたしの発した心ない一言が
誰かの「最後」の言葉にならないように。
そして普段の生活の中で、
感謝の思いを互いに伝えあえるように。
周りの人へのほんの少しの思いやりが
誰かを支えることにつながるかもしれません。
誰も一人では生きていけません。
困ったときには、誰でもいいのです。
「助けて」と伝えてください。