~ 向陽文化 ~

臨時休業期間じゃなくても読みたいおすすめ本⑦

2020年5月7日 07時00分

「今の人はみんな『何かをしなければ』と思いすぎるんですね。何かをしていることが当たり前で、何もしていない人はさぼっていると思われるのが現代ですけれども、時々は何もしないで、ボーっとしているという時間を持ったほうがいい。」
河合隼雄
(心理学者)

 立夏も過ぎ、暦の上では夏となりました。
 GW前半のように、気候が良い日が続くと、自宅で過ごすのが本当にもったいないと感じます。
 ドライブやキャンプ、温泉や登山、スポーツや釣りなど、本当だったら、このゴールデンウィーク中にやりたかったこと、たくさんあったんじゃないでしょうか。
 私も仕方がないので、YouTubeでキャンプ動画や車中泊動画などを時々見ますが、アウトドアに出かけたい、川や海で遊びたい、少年時代のわくわくとした気持ちを思い出したい、私のゴールデンウィークを返せ~というあなたにおすすめの4冊を、今日は紹介したいと思います。

■『四万十川 あつよしの夏』 笹山久三 河出書房新社
 ともかく思いっきり昭和の世界です。
 作品の舞台は昭和30年代の高知県の四万十川(しまんとがわ)近く。
 まだ日本は貧しい時代でした。「ALWAYS三丁目の夕日」という映画がありましたが、あの時代を想像するとイメージがわいてくるかも。田舎のお風呂は、薪で沸かす時代でした。
 温かな家族の中で篤義は、猫のキイと共に育っていきます。
いじめられていた同級生の女の子を救うために、彼はどう行動したのでしょうか。
 まだ読んだことがない大人にこそ、この本を読んでほしいと思います。もちろん、中学生にもおすすめです。
 ちなみに、この笹山久三さんの『とおい夏の日』は、2018年の公立高校入試の文学の問題で出題されました。最近の高校入試では、杉みき子さんとか内海隆一郎さんといった、割と古典的な作家も出題されていて、びっくりさせられます。
■『泣けない魚たち』 阿部夏丸 講談社
 こちらも負けじと劣らず、思い切り昭和感満載です。
 作品の舞台は昭和40年代の愛知県の矢作川(やはぎがわ)近く。
 夏場になってくると、川や海での子供や若者の事故がよく報道されるように、最近は川遊びや海遊びを、子供たちだけでするのはなかなか許されない時代になりました。
 阿部夏丸さんの作品は、子供たちがかいぼりなどの川遊びをすることが多く、子供のころに川遊びをした経験がある大人たちにとっては懐かしく読めるのではないかと思います。
 今は、そんなことができない時代だからこそ、自然とのふれあい、仲間たちとの友情、そして大人たちとの関わりなど、いろいろと考えさせられる本です。
 阿部夏丸さんは、児童書も多く出版しているので、もしかしたら読んだことがある人もいるかもしれません。なお、阿部夏丸さんの『峰雲へ』(小学館)も本当に素晴らしい本で、『BePal』おすすめなのですが、こちらはもう絶版になっているので、なかなか購入は難しいかもしれません。
 ちなみに、阿部夏丸さんもしばらく前は、よく入試や学力調査などで出題されていました。
■『翼はいつまでも』 川上健一 集英社
 こちらも、昭和40年代の青森県十和田湖(とわだこ)近くが舞台です。
 まあ、田舎の野球少年がラジオで聞いたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」を聴いて、何かに突き動かされるように、恋と友情、大人たちとの対立など、青春時代を格闘するお話です。
 ただ、改めて読むと、少しどうかなあと思う場面も多いので、気になる人は、昭和ってこんな感じだったのねと軽く読み飛ばしてください(笑)。中学生が十和田湖畔で一人でキャンプなんて、今なら大問題になりそうです。でも、友達や好きな女の子のために、もがく主人公に共感できる男の子は多いんじゃないかと思います。『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』にもどこかつながる本です。川上健一さんの他の作品では『ららのいた夏』とかもおすすめです。

■『ぱいかじ南海作戦』 椎名 誠 新潮社
 さて、最後は椎名誠さんです。もう説明はいらないくらい、世界中を旅して、様々な人と出会い、様々な冒険をしてきた椎名誠さんの本は、どれを読んでも面白く味わいがあります。
 この本は、現代といっても平成ですね。南風(ぱいかじ)が吹く沖縄の離島が舞台です。
 主人公は会社が倒産し、奥さんとも離婚し、全てが嫌になって、南の島にやってきました。
 南の島の海岸でソロキャンプ生活を始めたわけですが、様々なトラブルに遭遇します。
 南の島で持ち物を含め、すべてを失ったとき、あなたならどうしますか。
 阿部サダヲさん主演で映画化もされたので、こちらを見た人もいるかもしれません。
 なお、椎名誠さんの『アイス・プラネット』というお話が、国語の教科書に掲載されています。
 椎名さんの作品は『岳物語』や『あやしい探検隊』シリーズ、『哀愁の町』シリーズなど、本当に面白く、枚挙にいとまがないので、こちらもぜひ読んでみてください。

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